日本人はすでに先進国イチの怠け者で、おまけに労働生産性も最低な件
「働きすぎは悪」「仕事よりコンプライアンス」――日本全体がそんな方向に進んでいる。しかし、本当にそれでいいのか。誰も頑張らないし踏ん張らない、そんな国に未来があるのか。
モーレツがそんなに悪いのか?
興味深い数字がある。『データブック国際労働比較2016』を見ると、’14年の週労働時間(製造業)で日本人はG7(先進7ヵ国)の中で労働時間がかなり短いほうなのだ。
厚生労働省が調べた日本の週労働時間(製造業)は37.7時間。調査対象に各国でバラツキがあるため、一概には言えないが、米国の42時間や英国の41.4時間、ドイツの40時間より少なく、フランスの37.8時間、カナダの37.1時間と変わらない水準なのである。
日本人がどんどん働かなくなっている。
バブル直後には2000時間を超えていた年間の総実労働時間は少なくなり続け、’14年には1729時間にまで減少している(OECD調べ)。
(中略)
かつての日本人たちが寝食を忘れて働いた末に今の日本の繁栄がある。それにあぐらをかいて、「これからは一生懸命働かないようにしよう」などと言っていれば、あっというまに三流国に転落する。
政府の言うことに踊らされて、やれプレミアムフライデーだ、ノー残業デーだなどと浮かれる前にやるべきことがある。
働かざる者食うべからず。
この言葉を忘れると、日本人の末路は本当に哀れなものになるだろう。
(「週刊現代」2017年4月29日号より)
これはまた時代錯誤な記事ですね。。。1つずつ中身を検証してみましょう。
まず「データブック国際労働比較2016」の週労働時間のデータを用いて、「日本人はG7の中で労働時間がかなり短い」と主張しています。それでは、同じ「データブック国際労働比較2016」から年間の労働時間をみてみましょう。2014年の日本の平均年間総実労働時間は1,729時間。アメリカは1,789時間と日本より長いですが、フランスは1,473時間、ドイツは1,371時間と日本より遥かに短いのです。
長期休暇が制度化されているEU諸国に比べて、日本は有給休暇の取得率が5割未満ですから、年間の労働日数がそもそも違います。その差を無視して、1週間の労働時間だけを取り上げて「日本の労働時間はドイツより少なく、フランスと変わらない水準」などと主張することには、悪意すら感じます。
さらに「バブル直後には2,000時間を超えていた年間の総実労働時間は少なくなり続け、’14年には1,729時間にまで減少している」とのデータを取り上げて「日本人がどんどん働かなくなっている」と主張しています。確かに、毎月勤労統計調査の年間総実労働時間をみると、パートタイムを含む労働者では1993年の1,920時間から2015年の1,734時間まで減少していますが、パートタイムを除いた一般労働者では、1993年の2,045時間から2015年の2,026時間とほぼ横ばいです。
バブル以降、1人当たりの平均年間労働時間が減少したのは、短時間労働を行うパートタイム労働者の比率が増えたことが主な原因ということは、労務管理に携わる者の間では常識です。年間総実労働時間の減少というデータは、①格差拡大を助長する非正規比率の増加、②改善されない正社員の長時間労働体質という2つの問題をはらんでいるにもかかわらず、それを「日本人がどんどん働かなくなっている」との主張に用いるとは呆れるばかりです。
日本にはいまだに長時間労働信仰が根強く残っているんですね。記事には「かつての日本人たちが寝食を忘れて働いた末に今の日本の繁栄がある」と書いてありますが、そのような働き方こそが少子化の原因であり、50年後、日本の人口は約3割減るものと見込まれています。寝食を忘れ、家庭を犠牲にして働くことはむしろ亡国への道です。日本企業の経営者や管理職からこのような時代錯誤の意識が一掃されない限り、日本の長時間労働体質はいつまでたっても変わらないのでしょう。