パワハラ防止へ法規制議論 厚労省、指導との線引きなど焦点
厚生労働省は22日までに、職場でのパワーハラスメントを防ぐため、パワハラ行為を法律で禁止することなどを視野に入れた検討を始めた。現在は明確な規制法令がなく、国の対策も防止の呼びかけや啓発にとどまる。同省の有識者検討会で議論を進めるが上司の指導とパワハラの線引きなど、判定の基準を明確にできるかが焦点。今年度中に報告書をまとめる。
政府は3月に策定した「働き方改革実行計画」に、パワハラ対策を強化するための検討の場の設置を盛り込んだ。これを踏まえ、厚労省は労使関係者などによる検討会を立ち上げ今月、議論を始めた。
(2017.5.23 日本経済新聞)
ハラスメントのうち、セクシャルハラスメントについては、1997年に改正された男女雇用機会均等法で性的嫌がらせへの配慮が求められるようになり、法的根拠ができてから既に20年が経っています。さらに、マタニティ・パタニティハラスメントについては、今年の1月に、改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法が施行され、上司・同僚からの妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメントを防止する措置が会社に義務付けられました。
これに対して、パワーハラスメントについてはこれを禁止する根拠法令がないため、パワハラ被害者は、最終的には民事訴訟で会社や加害者に損害賠償を請求する、という形を取らざるをえませんでした。今日のニュースは、パワハラについても会社の防止措置の法制化を検討している、というものです。
パワハラ防止がなかなか法制化できなかったのは、業務上の指導とパワハラの線引きは難しく、損害賠償の対象となりうるかは個別の案件ごとに検証せざるを得ない、という事情があったためです。ただ、一昨年の電通の過労自殺の案件も、長時間労働ばかりがクローズアップされていますが、直属の上司によるパワハラも自殺の原因の1つとされています。
パワハラの法制化については、業務上必要な指導ができなくなるなどの産業界からの反発が予想されますが、人手不足の現在、社員を大切にして貴重な人材を離職させないのが大きなトレンドです。また、部下の指導について管理職に適正な教育訓練をするためにも、パワハラについてある程度ルール化することは、企業防衛のためにも有益ではないでしょうか。
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