複数職場分の労災給付 厚労省 兼業の労働者保護
厚生労働省は労働者が仕事中のケガで働けなくなった場合に生活を支援する労災保険の給付を拡充する。今の仕組みでは複数の企業で働いていても、負傷した際に働いていた1つの企業の賃金分しか補償されない。複数の企業で得ている賃金に基づいて給付できるように制度を改める。副業や兼業といった働き方の多様化にセーフティーネットを合わせる狙いだ。
(中略)
現在の仕組みではA社(給料月15万円)とB社(同月5万円)で働いている場合、B社での仕事中にケガをして働けなくなると労災の給付額はB社での月5万円の賃金を基に計算される。仕事を掛け持ちする人のセーフティーネットとして不十分という指摘があった。
厚労省は複数の企業で働いている人が労災認定された場合に、複数職場の賃金の合計額に基づいて給付額を計算する方式に改める。労働政策審議会での議論を経て関係法令を改正。早ければ来年度にも新しい仕組みを始める。
(2017.5.3 日本経済新聞)
政府の進める働き方改革には、兼業・副業などの多様な働き方の推進もあります。これに合わせる形で労災保険の仕組みが変わりそうです。
記事にある通り、現在の労災保険の制度では、業務中のケガにより休業等をした場合の給付は実際にケガをした会社での給与額を元に支給されますので、兼業をしている方がたまたま給与額の低い会社でケガをした場合には、安い給与額に基づいた低額の給付しか受けられません。
これでは所得補償の意義が薄れてしまいますので、複数の会社で働いている方については、複数会社の給与の合計額を元に給付額を算定しようというものです。これであれば、どの会社でケガをしたかにかかわらず、実際の手取り額に比例した所得補償を受けられることになり、兼業、副業を推進する働き方改革の方向性と一致します。
ただ、この案が施行されると、業務災害が起きないよう企業努力をしている会社も、社員の副業先がそうでない場合には労災給付に関与してしまう、という問題点はあります。おそらくメリット制(労災事故の発生度合いに応じて労災保険料が増減する仕組み)の適用などについてはその点の考慮はされると思いますが、賃金額や勤務状況などの証明を求められることになるでしょうから、他社の安全衛生体制の不備により余計な事務負担が増える可能性も出てくる、ということになります。
“複数職場分の労災給付 厚労省 兼業の労働者保護” に対して1件のコメントがあります。
コメントは受け付けていません。